子どもの育ち

お誕生おめでとうございます。

おかあさんもおとうさんも生まれてくる日を 待ちに待っていたことと思います。

子育ては、

「一度切り離された絆 (へその緒)を もう一度 糾(あざな)い直す作業の始まり」

と言われます。しっかりときつく綯(な)って、強い絆を結んでください。

でも、初めてのことばかりで どうしたら良いか迷うことも多いと思います。
まずは 子どもを知る ことから・・・
子育ては知識ではできません。何よりもまず、子どもを見てください。
もっとも弱い状態で生まれてくる人間の赤ちゃんですが、その成長と発達はプログラミングされていることをご存じですか?
ある時は ものすごいスピードで、ある時は ゆっくりのんびりと、一歩一歩 確実にその子の歩みで成長できるよう 大人は ひっぱろうとしたり、邪魔することがないよう気を付けなければなりません。そしてその発達の質は、大人が与える環境によって左右されることも知っておく必要があります。
日本には「三つ子の魂100まで」という言葉があります。
赤ちゃんの研究が進み、現在この言葉が現実味を帯びてきました。そして、その後に続く数年(就学前まで)が、人の土台となる最も大切な時期です。
さあ!生まれてきてくれたこの子と 泣いたり笑ったり 迷ったり落ち込んだり、色々な体験を積み重ねて おとうさんもおかあさんも 成長していきましょう。
 赤ちゃんは生まれたその瞬間から、学習を始めています。最初の課題はこの世界が自分を大切な存在として受け入れてくれるかを探ることです。
 安定したお水(羊水)の中でフワフワとすごしていたところから、いきなりダイレクトに刺激を受ける世界に放り出されたのです。赤ちゃんにはどれほどの驚きと不安があるでしょう。
そんな時 おなかの中で聞いていた声、慣れ親しんだおかあさんの匂い、やさしいスキンシップと温かいまなざしがあれば、それは赤ちゃんにとって絶対的な安心材料です。
不快・不安を快・安心へと変えてもらう経験、無条件に欲求を満たされる経験の積み重ねが、この世界に受け入れられた という喜びとなって成長発達を促していきます。

おなかの中

光を感じ・音を聞いて・母親の感じた匂い・風味も感じています。そのうえ、母親が自分に対して抱いている感情までも察することができると考えられています。

生まれたて~

この世界を知るために 莫大な量の学習のスタートです。
とはいっても赤ちゃんの学習はフワフワと眠りながら。
一日を昼夜関係なく飲んでは眠りを繰り返します。
生まれた時から 母親を認識しているし、父親 他の家族も間もなく把握します。

赤ちゃんがこの学習に没頭するためには 周りの大人が十分に世話をしてくれる必要があります。そしてその関わりに一貫性があること。

一番敏感なのは触覚
触れる・触れられるの大好き。自分に触れてくる人の心を探るのも得意。
触覚に与える刺激のバリエーションが、脳と心 さまざまな知的能力を拡げます。
視覚 …
見えてはいるけれど、まだまだ未熟。
これからの経験で視覚の基盤となる脳の回路が発達します。
大人が考えている以上に 顔を見たがっています。見せてあげてください。
聴覚 …
聞こえてはいるけど未熟。
聴覚情報を処理する速度は大人の半分程度です。
ゆっくり・抑揚をつけて話しかけてあげましょう。
騒音には注意が必要です。

1ヶ月~ 遊びの中心は見ること

手足の動きが活発になってきます。
喃語が始まります。赤ちゃんは自分の発見・感動に共感してほしくてたまりません。
瞳を見つめ、ゆっくりと抑揚をつけて応答してあげてください。
声を出して笑えるようになる・・・これは発語のレッスンです。
自分の手を見つめたり、おもちゃにしたり。追視もできるようになります。

3ヶ月~

首がすわってきます。子どもの成長が大きく見える時期です。
昼間起きている時間が長くなります。生活のリズムを作っていきましょう。
目の前におもちゃを持っていくと、手を伸ばします。
お腹がすいた・おしっこが出ただけでなく、泣く理由も多様化してきます。
大人はどうして泣いているのかを的確に察知し、答えてあげましょう。
授乳はお腹がすいているときに。
(一度に飲める量が多くなると授乳間隔もあいてきます。十分足りているかどうかは、授乳後の赤ちゃんの様子を見て判断しましょう。ミルクは必要なカロリー・栄養が計算されています。表示されている量と間隔を参考にしましょう。)

体重は出生時の2倍に。

~ 1歳

寝返り・ずり這い・よつ這い・高這い・お座り・つかまり立ち・伝い歩き・あんよ…。
子どもの運動機能は体幹から抹消へ発達が進みます。
特に 手足を交互に動かして進むハイハイは脳の機能的発達(視覚認知機能・感情の芽生え)に重要な役割を持っています。( 視覚の基本能力は6ヶ月ですべて生じて、1年でほぼ完全に調整されます。)
どの動きも、その時その時で充分経験することで、ぎこちなかった動きは滑らかに効率のいい洗練された動きになります。動きながら、使いながら自分の身体の仕組みも知っていきます。
ますます行動範囲は広がり探索活動も目が離せません。
6ヶ月頃には 大人の視線の先を追いかけられるようになります。
7~9ヶ月頃には親指と人差し指の腹で小さなものも つまめるようになります。
昨日までできなかったことが今日はできるというように目覚ましい成長が見られる時期です。
家庭内での事故防止に努め、十分に遊べるように環境を整えてあげましょう。
子どもは望ましい行動が分かりません。あらゆることをして大人の反応を見ています。どうふるまうべきかを教えてあげましょう。
大人の子どもにかかわる姿勢には「けじめ」が必要です。
‟昨日”まで許されていたことを、‟今日”からは「だめ!」は子どもを混乱させます。

食事

離乳食を始めましょう。
食欲がわくのは、空腹感からだけではありません。そこには心の働きが大きく関与しています。楽しく食を囲むだんらんの場に家族の一員として迎えてあげましょう。
6・7か月頃は貧血に注意が必要です。また、お椀・コップから飲む練習もこのころから始めましょう。
一度嫌がった食材も、柔らかさを変えて・形を変えて…繰り返し何度でも与えていきましょう。
脳の成長には、胎内での4ヶ月と出生後の2年までに摂取される栄養の質と量が大きく影響します。食事はバランスよく、体を動かしてお腹を空かせ、しっかり食べられる子を育てましょう。

言葉

音と意味の間に橋がかかるのは生後9~10ヶ月頃。
1歳の誕生日を迎える頃には平均約70語を理解しているといわれます。が、正しい言語力は人が直接子どもに語りかけることによってのみ育てられ、 聞く経験の上に成り立つものです。日々、温かい言葉をたっぷりかけましょう。
一定数の言葉を理解するのと 同じ数の言葉が話せるようになるには 通常5ヶ月程のギャップがあるといわれます。

 体重は出生時の3倍に。脳も生まれた時の3倍の大きさに。

1歳 ~

大好きな人と自分が一体ではないということに気づきだします。
子どもにとっては大きな心の成長を迎えます。大人にとってはどう扱っていいのか思い悩む時期です。子どもがイヤ!とごねたときは、まず子どもの思いを代弁して子どもに返してみましょう。それだけで、自分の気持ちが伝わったと安心して、ヒートダウンすることも。
「じぶんで!」の主張が増えます。やりたい気持ちを認めてもらい、チャレンジを繰り返し、へたくそながら・まちがってはいても自分でできた!と納得・成功体験を積み重ね 達成感を味わうことで、この先の自己肯定感・何事にもチャレンジしていける心を育てます。
励ましの言葉をかけてあげたり、できたときは 「やったね!」と共感してあげてください。
大人には 心の余裕と忍耐力が求められます。
卒乳を迎えると 食事と食事の間に間食が必要になります。
間食は一度にたくさん食べられない子どものためのものです。食事の一部となる食品を選びましょう。お菓子の類のものは、まだ教えない方がこの先の食生活を乱れさせません。
苦手な食品も促されると食べようと努力します。励ましながら食べられる食品を増やしていきましょう。大人が「おいしいね。」と食べて見せるのも 子どもの気持ちを変えるのに役立ちます。
人には意図があるということを理解し、意図的な行為と偶然の行為を判別できます。
1歳半頃からは他人の痛みを理解できるようになります。

2歳 ~

まだまだ自己中心性です。自分の視点からしか見えません。
 (かくれんぼをすると自分の両眼を手で覆って隠れたつもりになる。)
お友達と同じ場所で遊んでいても関わりをもってはいない状態(並行遊び)です。
うそ泣き=甘え泣きをするようになります。
指示されるよりも、選択肢を与えられる方が反抗せずに取り組みやすく、大人が指示する時も、命令や強制でなく「あなたならできるよね。」という形で伝える方が、子どもの心に届きます。
映像を見ることと言葉を理解することの両方を同時にはできません。
2歳~6歳までの間 毎日新しく8語ほどを学ぶと考えられています。
食に好みが出てきますが、「嫌いなものは食べない」とはちがいます。
「むら食いでも、空腹感を持って夢中で食べる。」ことが大切です。
また こぼさず食べるよう声をかけてあげてください。
子どもの食生活が偏ることで栄養が十分に摂取できないことは脳の発育にとっては最も大きな脅威になります。バランスを考えて食事を用意しましょう。
2歳児でも「約束」を守る・守ろうとします。大人はその場しのぎのうそをついてはいけません。たとえ子どもが約束を忘れていても 大人は守りましょう。
子どもは何事も近くにいる大人の行いを見て学んでいます。
これまで、ひたすら成長していた脳ですが、使われない・刺激が入ってこない部分の刈り込みが始まります。
 
ここまでの3年間で 人間として生きるための基本的な能力を育てあげます。
親の教えを受け入れやすいのもこの時期です。
広い世界(美しい植物や動物・音楽・芸術・運動・食事)を経験させてあげましょう。

3歳 ~

家の中から外に関心が向き始めます。
積極的に外遊びに連れ出し、全身を使って遊びましょう。
運動不足は運動機能面だけでなく、知的・言語・性格・意識…子どもの全人格に未発達な部分を残すといわれています。
「なぜ?」「どうして?」の質問がさかんになります。考える力がつき始めた証です。
正確に答えられなくても、いつもやさしく、愛情をこめて相手をしてください。時には「どうしてだと思う?」と返してみても。
なんでも自分でやってみたい!と思い始めます。大人の仕事に手を出してきたら、見守りながらやらせてみましょう。せっかく芽生えた意欲の芽を摘まないよう気を付けましょう。
子どもの周りに真似をしたいと思う、大人の姿があることが大切です。
ルールを理解します。お友達とルールのある遊びができるようになります。
好き嫌いがはっきりしてきます。
「好き」の気持ちがはっきりしない子には声をかけて「この感情が“好き”ということなんだ」と意識できるようにかかわってあげてください。
まだ 他人の立場に立って物を見ることはできません。
愛とおもいやりという基本的な道徳観を身につけていきます。

3 ~ 5歳

  • やっと自分の心に働きかけることができるようになります。
  • 異年齢混合での遊びが子どもを大きく成長させます。

4歳 ~

生活の中心は友達との遊びです。
発達課題は自己主張と自己抑制を心得る事。

  • 友達といると1人でいるよりも何倍も楽しい!という感覚。
  • 思いきりケンカをしてスッキリする気分。
  • 友達とうまくやるために少し自分を抑えるコツを得る。

勝ち負けに関心が出てきます。勝つこともあれば、負けることもある体験を通して 気持ちを抑えたり、負けないように頑張る気持ちができてきます。また、友達を応援したり、慰めたりの行動も出てきます。
努力したことを評価して欲しがります。
子どもの様子をよく見ていて、子どもが褒めてほしいときに誉めてあげましょう。
ガンバリのきく子になります。
物語の面白さがわかり、ファンタジーが豊かになります。

4・5歳になると

  • 自分の過去と未来をつなげられるようになります。
  • 1時間程度の歩行が可能になります。
  • 両手の協応操作が確立します。

5歳 ~

脳は大人と同じ1300gまで成長します。
自分自身の活動 ― 遊び ―に没頭する時期です。興味を持ち、探索し、試し、仲間と協力し、仲間と競うことができるようになります。
「正しさ」という新しい道徳基準を取り込み、大人の非にもとても敏感になります。
子ども同士でも順番を守らない・乱暴する子を非難したり排斥したりします。
道徳観念を教えていく時期です。
6歳までに1万3000語ほどを理解します。
健康な肉体の基礎をつくり、感謝の気持ちを養いましょう。
はじめに話したように赤ちゃんにはプログラムされた成長発達過程があります。
けれどそれは、脳のタイミングのちょうど良いときに環境と感覚刺激による経験がなければくるってしまいます。後から慌てて成長発達のステップを飛び越すことは出来ないのです。
その成長を保証するのが遊びです。
子どもの遊びはそのまま学びだからです。
子どもはたくさんの種類の遊びをすることで、様々な経験をし学び発達します。遊ぶことで楽しみながら 無意識に、発達課題に取り組んでいるのです。
子どもの今の姿をよく見て、バラエティーに富んだおもちゃを選び、絵本を読んであげ、大人も子どもと一緒に楽しんでください。子どもは一緒に遊んでもらうことで、自分に向けられた愛情を感じ、心を安定させることができます。(一貫性のある関わりが大切です。)子どもは心が安定しないと、栄養のある食生活をおくっても、精神的にも肉体的にも育つことができないからです。
大人が子供の状態を的確に判断して対応してくれることで子どもは健全な自己像を確立していくことができます。
また、発達には個人差があります。一部分を見て早い遅いと一喜一憂することなく、子どもの全体像を見てください。明るい笑顔で生き生きと毎日を過ごせているかが最も大切なことです。
イヤイヤ期・ギャングエイジと言われる時期も 大人にとって辟易とし、放り出したくなるようなたいへんさですが、子どもが手を焼かせたり、ごねたり、反抗できるのは、そこに信頼できる大人がいるからです。そんな時は子ども自身も苦しんでいると同時に大きく成長する時でもあるのです。大人も右往左往しながら、自分自身が成長させられる時と考えて、子どもと向き合ってください。
日本には「心をこめる」「祈りをかたちにする」という見えないものを大事にする文化があります。子どもの育ちの中で、生まれてからの6年間は「見えない部分」こそ大事にされるべき年月です。
利便性・時短ばかりがもてはやされる時代。「面倒くさくて時間のかかる子育て」ではなくて、「かけがいのない至福の時」と思い出せる時間にして下さい。
このホームページを作成するにあたり、以下の文献を参考にさせていただきました。

なぜわたしたちは0歳児を授かるのか・デチタ でチた できた!
日本のシュタイナー幼稚園・「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの
乳幼児期のアタッチメント・新「育児の原理」あたたかい心を育てる
食事時落ちつかない子どもたち・遊びが学びに欠かせないわけ
薬に頼らず家庭で治せる発達障害とのつき合い方・子どもの夜ふかし脳への脅威
赤ちゃんの脳と心で何が起こっているの?・胎児は見ている・まなざしの誕生
赤ちゃん学を知っていますか?・発達がわかれば子どもが見える・哲学する赤ちゃん
子どもの「遊び」は魔法の授業・情報化時代の子育て・脳科学から見た読み聞かせ
ハンガリーたっぷり遊び就学を見通す保育・0歳から7歳までのシュタイナー教育

睡眠眠りも成長します。脳を育てる正しい睡眠習慣をつくりましょう。

表は横スクロール で移動します

睡眠 活動(起きていられる時間)
新生児 16 ~ 20時間(レム睡眠50%)フワフワ眠りながら、五感から入ってきた情報や感情を
整理し記憶を固定・消去させています
40分 ~ 1時間
3ヶ月 14時間 ~ 17時間昼夜の区別がつくリズムをつくりましょう 1時間 ~ 1時間20分
6ヶ月 13時間~14時間+昼寝2~4時間連続睡眠は6~8時間 2時間 ~ 2時間30分
1歳 夜の睡眠11時間 + 昼寝3時間 3時間30分 ~ 4時間
2歳 夜10時間 + 昼寝2~3時間 ~ 6時間
3歳 夜10時間 + 昼寝1~2時間レム睡眠は20%に ~ 6時間
4~5歳 11時間前後 ~ 12時間
子どもにとっての睡眠は休息だけでなく、‟学び”・‟脳の発達”のための時間です。

浅い眠り(レム睡眠=加齢とともに減る睡眠)は
脳を創り
脳を育てるために。
覚えたことを整理して脳に書き込んでいます。
深い眠り(ノンレム睡眠)は
脳を守る 修復する
ホルモンを分泌させ体の成長を促す
自律神経を整えるために。

朝は太陽の光を浴びて、夜は暗く、遅くとも 夜9時にはお布団へ10時には一番深い眠りの中に。

子どもは大人の介入なしに生活のリズムを整えることはできません。
大人が意識して整えてあげましょう。
生活リズムが規則正しければ、子どもの成長も健康的になります。

心と脳不安は子どもの脳の発達を阻害します。
(遊びと触れ合いがないと 脳の発育は20%~30%小さくなる とも。)

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新生児 快・不快から始まる 約250g ・発育の重点は右脳
・大人対子どもの良好な関係が人を信じる力の基盤をつくる
・脳の成長は摂取する栄養の量と質に影響される
1歳 大好きな人と自分が一体でないと気づきだす(いやいや期)
感情に愛する心が芽生える
約750g
(3倍に)
2歳 ・善い事・悪い事を知らせていく
・指示より選択肢を与えられることを喜ぶ
大人の脳の70%に ・発育の重点は左脳に
3歳 ・自分の考えを持ちだす
・好き嫌いがはっきりしてくる
4歳 ・勝ち負けに関心が出てくる ・再び右脳が優位に
・右脳と左脳の連絡向上
5歳 ・善い・悪いが判断基準に
・大人の非に敏感に
約1300g
(大人と同じ)
・以降 左脳と右脳 交互に発育を繰り返す
健康な脳を育てるために大切な要素

  • 刺激(頻度・持続時間・強さ)
    生まれたてから一番与えられるのは
    “触覚”への刺激です。
    次に見つめること・語りかけること
  • 遊び
  • 栄養
脳と感情の発達を守るには 親との関わりの質がカギとなります。
自然に身についてくるマイナスの感情とは違って、プラスの感情は気づきにくい・
分かりにくいため、代弁してもらうことも必要です。
自分の感情を理解することは、その感情との付き合い方を知る・他人の感情を理解する 事につながります。